戦後、巷にあふれた孤児たちを救おうと故生山泰氏の崇高な理念かつ熱い思いによって昭和21年に享誠塾がスタートし、77年の歳月が流れました。時代とともに社会のニーズは変化してまいりましたが、子どもたちにとって享誠塾が安心して生活できる場所でありたいという思いは引き継がれております。現在は3歳から19歳までの子供30名が生活しており、うち5名は一昨年に開設した「享誠塾 長坂ホーム」で生活しています。そして、多くの子どもたちが享誠塾を巣立ってゆき、その数は1,100名を超えました。施設での日々の安定した穏やか生活の保障はもとより、退塾した後も享誠塾が子どもたちの「ふるさと」として安心して気軽に帰って来られる場所でありたいと願っています。

 本年4月にこども家庭庁が発足しました。その創設目的には「こども誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しする」とあります。更に子供政策の理念として「18歳の特定年齢で一律に区切ることなく、こども、若者が円滑に社会生活を送ることができるまで伴走する」とあります。この「伴走する」ことが仕事の魅力でもあり、大切なことだと痛感します。現在1名の大学生が施設から大学に通い、学業とアルバイトの両立に挑戦しながら学生生活を送っています。彼女の頑張りは後に続く子どもたちにとっても大きなものであると思います。施設で生活する子どもたちが夢を持って、社会の荒波に立ち向かっていけるよう私たちは支援していきたい思います。

コロナ禍を経て、4年ぶりに白山登山が行われました。中高生8名、引率職員5名で室堂を目指し、途中突然の雷雨に見舞われましたが、きれいな夕日に感激し、翌日は晴天の中御前峰でご来光を見て感動したと語る子どもの姿が印象的でした。様々な行事や毎日の生活の中で、子どもたちは自分の居場所が確保され、自分たちが大切にされていると感じる関わりが職員には求められます。子どもたりとの「出会い」を大切にし、何気ない日々の積み重ねの中で、笑顔溢れる1年にしたいと思います。

                                                                            令和5年8月

社会福祉法人 享誠塾

塾長   北川 茂樹

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